mytoshiさん 千葉県
Doronkoパラリンアートカップ2025グランプリ
受賞作「ま、まずい!!」はタイトルにも高評価が
千葉県内のカルチャーセンターの一室。写真を横目にパステル画に向かう受講生の間を、杖片手に軽やかに歩き回る姿がありました。「あじさいは花びら1枚1枚、光の当たり方が違うので難しいけれど、濃い部分から塗っていきましょう」
昨年のDoronkoパラリンアートカップ2025でグランプリを射止めたmytoshiさん(57)が月に1回、講師を務めるパステル画講座の一コマです。お試し用の体験講座に集まった人には「僕は美大も出ていないし、本格的な勉強をしたことはありませんが、人の心に届く絵を描きたいと思っています」と話すのが慣例。講座は昨年春からスタートし、入れ替わりはありながらも徐々に参加者が増えているそう。「みんな何らかの形で絵を描いたことがある人ばかり。僕のほうが教えられることも多いですね」
季節の花あじさいをテーマにした講座風景
本格的に絵を描き始めたのは、45歳のときでした。仕事中の転落事故で左足骨折の大けがを負い、入院中に病院と交わした同意書の裏にボールペンで描いた自画像が最初の作品。退院時には看護士ら40人の似顔絵を描いて手渡しました。下肢左脚関節全廃で障がい者認定を受け、見通しのきかない将来への不安と闘いながら習作に励みます。仕事も収入も失いながら、家族の支えもあって少しずつ希望を取り戻していきました。転機は自動車をテーマにしたコンテストに応募する過程でパステル画との出会い。比較的安価ながら大胆な筆致を実現できる画材で若い頃に体験したブレイクダンスをテーマにした作品を描き、Doronkoパラリンアートカップ2024で初の入選を果たします。
1年後に前回のグランプリを獲得したのは、大相撲がテーマで、絵に込めたのは土俵際でもあきらめない気持ち。手を着きそうになりながら体勢を立て直そうとする力士に半生を投影した一作は、「黄色い背景に言葉では表現できないものが表現されている」(櫛野展正・審査委員長)と高く評価されました。
受講者によるグループ展も予定されているそう
パステル画はさまざまな色のかけ合わせで勢いのある絵が描けるとmytoshiさん。メーカーや種類による異なる色合いを試しながら、習作に励む毎日を送ります。「ここ数年、障がい者のアート作品のレベルが上がっていると感じます。本格的に学んだ人の画力には敵わない。でも、この絵はあの人だ、と思ってもらえる作品なら描ける。スポーツにたとえれば、『打ち込み』の毎日です」
昨年の表彰式は当日の朝の母親の急死で欠席となり、今回、11月の表彰式にあらためて登壇する予定になっています。規程でグランプリ受賞者はグランプリの選考からは外れますが、「パラリンアートは僕の人生の支え」と話し、コンテストへの意欲は衰えません。新たな応募作バトンが題材と教えてくれました。その真意を「大学入試で苦しんだときにも、障がいを負ったときにも支えてくれた母親への、そしてハンデを負いながら創作に打ち込むすべての障がい者につなぐためのもの」と話します。
そんな思いが込められたのは、どんなバトンでしょうか。いまから楽しみです。
文/伊東武彦(スタジオ・モンテレッジォ)