kayaranさん 神奈川県
Doronkoパラリンアートカップ2025どろんこ賞パイオニア部門
自宅のリビングで創作に励むkayaranさん
病院の総務課に美術担当として在宅勤務し、院内に飾る絵画や掲示物のイラストを手掛けているkayaranさん(37)。仕事以外でも精力的に作品制作に取り組んでおり、取材時には大きなキャンバスにアクリル絵の具を用いて、日本の古き良き街並みを思わせる風景画を制作していました。
「すべて空想で描いています。これはF30号(写真参照)ですが、一番大きいものだとF50号を描きました」
サッカーの一場面を描いた『競り合い』で、Doronkoパラリンアートカップ2025のどろんこ賞【パイオニア(初応募)部門】を受賞。学生時代の自身のプレー姿をモチーフにした作品で、ボールを巡る1対1の攻防の緊張感と、サッカーの楽しさが生き生きと表現されています。
「北澤(豪)さんや澤(穂希)さん、国枝(慎吾)さんが審査員でいらっしゃって、すごいなと思って応募しました。小学生の頃から就職するまでサッカーをやっていたので、サッカーを題材にして描いてみたいなと」
子どもの頃から絵を描くことが好きだったkayaranさんは、外で遊ぶよりも、ポケモンやブラック・ジャックなどの好きなキャラクターを描いて過ごすことが多かったそうです。高校卒業後、2〜3年働いたのち、ロンドンのグラフィック系専門学校へ留学。絵を描くための基礎的な技術を学びました。帰国後は、音楽関係のフライヤーやポスターのイラスト制作に携わるなど、仕事でもプライベートでも絵を描き続けてきました。
サッカー体験を元に描いた受賞作「競り合い」
6年前、kayaranさんは白血病を発症しました。移植手術を受けて寛解に至ったものの、退院から1年ほど経った頃、後遺症である慢性GVHDを発症。手がつって思うように動かせなくなりました。それでも、絵を描くことはやめませんでした。
「しばらくは100m歩くのもつらかったのですが、何もしないでベッドにいるより絵を描いていたほうが気がまぎれたので、なんとか描いていました」
その間、障がい者の就労支援を行う企業が開催するアート講座で技術を磨き、周囲の勧めもあって絵画コンテストへ挑戦しました。
「これまでコンペティションに応募したことがほとんどなかったので、受賞には驚きましたし、ありがたかったです。社会復帰したばかりで家族や周囲の人たちに心配されていたので、これで安心してもらえたかなと思っています」
副賞として贈られた「どろんこ米」は、お世話になった方々にプレゼントしたほか、自宅で土鍋を使って炊いて味わったそうです。「もちもちしていて、今まで家で食べたお米の中で一番おいしかった」と、うれしそうに話してくれました。
どろんこ米は、味がしっかり感じられ、
あまりのおいしさにびっくりしたそう
今回の受賞を機に自信を深め、創作に向き合う気持ちにも変化が生まれました。
「偶然性を大事にしながら、構図や色使いを感覚的に描いた部分があったのですが、自分の感覚を信じて描けるようになりました。自分の絵の方向性が、ようやくちょっと定まってきました」
手応えを得たことで、積極的にコンペティションへ応募しようと決意。現在は月に3件ほどのペースで作品を出しています。仕事でも自身の創作活動でも、常に手を動かし続けているといいます。
「だいぶ先の話になりますが、自分の個展ができるくらいまで、知名度や作品の量と質をあげていきたいなと思っています」
文/柾木風子(スタジオ・モンテレッジォ)